第三回書評 China 2049 マイケル・ビルズリー

日経BP社 2000円 2015年9月発行 中野香方子訳
今の米中関係の動向について、その背景を知りたい人には是非お勧めです。訳者が優れているためかとても読みやすい。
アメリカの対中国政策が親中から敵対関係に大転換した事情が良く分かる。今や、共和党も民主党も対中国政策では反中国共産党で一致しています。その理由が述べられています。というか、この著書がアメリカの中枢に影響を与えたと言えます。
CAME的にはアメリカの対中国についての動向とこれからの展開についての7割はこの本を読むと理解し予測できます。・・・と言いたい。
2015年に翻訳されており、内容は古いと思うかもしれませんが、米中関係に関心のある人は騙されたと思って、読んで欲しい。
CAMEが最初に読んだ(2015年11月)ときは、半信半疑だったのですが、その後の経過を眺めると、本書の分析と提言に沿ってアメリカが動いていると思います。著者の影響力は大きい。
CAMEは何てアメリカ人は単純なんだ!と思っちゃいましたが、経済的に豊かになれば中国共産党が民主化を進めると本気で考えていたようです。だから、ソビエトとの冷戦が決着して、日本を仮想敵国として反日感情を煽って、無理難題を要求していましたが、その時は中国と手を組む気満々だった。今や風向きが大きく変わりました。「ずーっと騙され続けていた」とかつての親中派の大物が気づき、深い反省のもとに書いたのがこの本です。
著者の洞察通りなら、中国共産党の出方も予想できます。共産党の首脳部は2千年前の戦国時代の戦略を現代風にアレンジして展開しているということです。・・・弱い奴は朝貢させ徹底的に膝まずかせる。敵が強ければ媚びへつらって油断させ、隙を突いて倒す。…高校の漢文の時間に勉強した、アレです。
中国戦国時代は農業社会でしたから、土地と人民をどちらが多くとるかを競い合うことがベース。いわゆる、ゼロサム社会した。
今、コロナ・ウイルスの蔓延で世界的に孤立してしまった中国は盛んに日本を持ち上げています。しかし一方で尖閣諸島に公船を派遣して軍事的緊張を高めています。今は、日本と良い関係を作りたいそのための譲歩をしなくてはならない。=日本のステータスを高めていしまう。バランスを取るために尖閣諸島周辺に船を出して軍事的緊張感を高め=日本よ調子に乗るなよ!とやっているわけです。
ゼロサム社会ではウイン・ウインの関係などありえません。世の中は奪うものと奪われるものの関係としか見えていません。共存共栄など甘い!と言うことです。アメリカもようやく中国のやり口に気付いたということです。
日本はアメリカの仮想敵国ではなくなる可能性が出てきました。しかし、慢心してはいけない。相変わらず、制空権は奪われ、各地に米軍基地が残り、その維持費を私たちは支払わされています。これからもローマのカルタゴにならないように振舞わなくては・・・その点、アベちゃんは良い外交を展開している。内政ではいろいろ問題はあるけれど・・・