第四回書評 「反日種族主義」 文芸春秋社 1760円

韓国で今年4月の総選挙で与党が圧勝した。
この結果を受けて韓国が中国、北朝鮮の陣営に加わることが決定的になったと言えよう。朝鮮族の悲願である南北統一という快挙に向けて歴史的な大きな一歩であり、誠に目出度いことである。ただ、北朝鮮が素直に歓迎するだろうか、まだ一山もふた山もあるだろう。北朝鮮は伝統的に外に虚飾を振りまいてきたが、南北統一すれば、ウソまみれの実体が外部にも内部に対しても赤裸々になってしまう。
その結果、北の支配者キム一族の権力基盤が崩壊する恐れがある。こうした事態を避けるためには、中国共産党の承認のもとで、北の主導による南北統一を進めることと、厳しい思想統制と情報統制を行うことが不可欠であろう。

CAMEには理解しがたいことだが、現在の韓国政府は北主導の統一に向けてまっしぐらに進んでいる。選挙直後、国家を卑下?し日本を擁護すると処罰する法律(親日賞賛禁止法)の制定を進め、さらに北朝鮮政府を非難するチラシを北朝鮮にばらまく行為は処罰の上、法人格を取り消すという法律を制定するらしい。北が望む厳しい情報統制に着手した。その先に彼らには地獄が待っている。

朝鮮半島の歴史に学ぶなら、統一朝鮮実現の暁には、おそらく2~3年の内に韓国の政治家は全て、投獄されるか処刑されるかの運命だ。罪名は国家反逆罪とかスパイ罪とか何とでも付けることができる。韓国軍内にも北朝鮮のスパイが相当程度入り込んでいるので、軍幹部の汚職や米国のスパイ容疑の「証拠」は既に固められていると思われる。彼らも、処刑は免れない。企業経営者も「白衣の李舜臣」となってキム一族に飼い殺しにされ、搾り取られ、半島経済は崩壊する。

北朝鮮は社会主義を標榜しているが、その実態は李氏朝鮮を彷彿させる世襲制の身分社会であり国民は出自などから「成分」という一種の階級に細かく分けられている。韓国民は資本主義に毒された穢れた者たちであるから、当然北朝鮮住民の下、最下層(≒奴婢?)「成分」として位置付けられ、無権利状態となり財産は没収、酷使・搾取され、飢餓に苦しむことになる。キムファミリーは国民が餓死しようが構わない。権力と富を独占する正当な権利を有していると思っている(=主体思想)。

古い話だがCAMEが小学生のころ南くんという漫画が得意な同級生がいて、よく彼の家に遊びに行った。朝鮮漬け(=キムチ)の口臭が嫌だったが、人柄や何より漫画を描くのが上手で、子ども心に「天才かも…」と思って付き合った。彼の家でラジオドラマ「鐘の鳴る丘」を聞いて、今でもその主題歌を歌うことができる。(50年後に、ラジオドラマのモデルとなった児童養護施設を訪問することができた。感無量だった。)その南くんは突然引越してしまった(夜逃げ?…)空っぽの家の玄関にCAMEあての置手紙があり、心のこもった別れの言葉と何枚かの漫画が添えられていた。
引越し先は「地上の楽園」北朝鮮であろうとは大人たちから聞いた。そのころ(1959年から)北朝鮮への帰還事業が始まり、多くの在日朝鮮人が帰国していった。
「在日朝鮮人帰国協力会」が結成され、朝鮮人を日本本土から排除したい自民党・保守勢力と北朝鮮シンパ勢力である社会党・共産党とが同床異夢で帰還運動を続けていた。当時のマスコミもまた、人道的な事業と捉え、新聞各紙はこぞって帰国事業を歓迎し賛同する記事を書いた。
事業の進捗の中で次第に「地上の楽園」の実態が明らかになってきたが、社会党や一部マスコミはそうした情報を否定し、実態から目を背けて支援を続けた。そして大勢の朝鮮人が「帰還」した。事業は1984年まで続いた。総数93,340人(日本人妻・親族約6,800人含む)に達した。

朝鮮に帰国すると荷物だけでなく着ていたコートやアクセサリーなど身ぐるみはがされて、最下層の「成分=身分」に落とされ悲惨な暮らしを強いられたという。南君は北に帰国して漫画を描く紙も鉛筆も失ってしまったのではないか、ちゃんと三度の食事はできているのか、官憲に反抗して処刑されたり鉱山労働に駆り出されたりしたのではないか…二度と会えないであろう幼友達のことは忘れられない。

後に発生した、北朝鮮による日本人拉致事件についても、一部社会党やマスコミが、北朝鮮を誹謗するための虚偽宣伝であるとして被害者家族を非難し、活動を妨害していたことも記憶にとどめておくべきだろう。北朝鮮のウソまみれの悲惨な実態の隠蔽に、韓国の左派勢力だけでなく多くの日本人も手を貸し続けていた。

リベラルと称する人たちは、たとえ北朝鮮が「社会主義・共産主義」を自称していても、そんな言葉尻にすがることなくウソを見抜く調査力と科学的精神を持って、イデオロギーを蹴飛ばして世界の未来を語ってほしかった。社会党凋落の一番の要因は、ロクに調べることもせず中国や北朝鮮が提供する情報を鵜呑みにし、その宣伝部門を買って出たことにあると思っている。この怠惰が自民党をのさばらせ今日にいたることになった。

韓国与党は総選挙で大勝したものの、新型コロナの汚染第2波?と慰安婦団体「正義記憶連帯」(正義連)等が長年慰安婦を搾取していたことが発覚し揺れている。
この騒動の根底には今回紹介する著書「反日種族主義」(李栄薫、金洛年、金容三、朱益鐘、鄭安基、李宇衍 共著)が昨年出版され、発行部数も11万部と韓国としては驚異的な数値をたたき出したことがあると思われる。
著書の内容は日本ではすでに周知の事柄が多いが、韓国内部から「反日」の実態を主に慰安婦問題を中心に、実証に耐える根拠を添えて書かれており学ぶべき部分がある。
韓国内では衝撃的事実として受け止められ、今までの韓国内の常識、慰安婦問題を含めた反日プロパガンダ、反日のための反日といった風潮に疑問をさしはさむ余地が出てきていた。
本書は韓国内のその道の権威と言われる人たちが書いたものであるため、今のところ政府や左派勢力も暴行事件程度で、組織的な弾圧や、発禁処分はできないようだが、新たに制定予定の「親日罪」でそのうち拘束するだろう。(韓国では法律制定前のことでも遡及して適用する=事後法の考えが受け入れられている)

よく「愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ」と言うが、それは実証研究の上に成立した歴史であること、そして外部からの検証に耐えうる記録や文物、遺跡などが存在していることによって成り立つ。現在は北朝鮮だけでなく、韓国でも根拠不明のウソや誇大妄想の歴史がまかり通っている。しかし韓国人の大半がハングルしか知らないため漢字が混じった半世紀前の書籍や新聞記事が読めない。つまりは国民から検証される心配がない。「今は繁栄している韓国に相応しい歴史が求められている」そうだから、何をか言わんや。

南北統一は朝鮮半島にとって歴史的な重大事であるが、朝鮮半島の歴史を紐解くと重大事ほど敵に向かうより、内部で激しい殺し合い、派閥争いを繰り広げ悲惨な結果に陥っている。その轍を踏まないことを期待したい。とりわけ朝鮮戦争の時のように我が国に韓国系のボートピープルが大量に押し寄せるような事態は願い下げだ。

いかなる韓国の賢者もウソだらけの歴史からは、誤った認識を学び取ることになる。
「反日種族主義」の著者たちは国家の歩みを誤らせないために命がけで出版したと思う。是非読んで欲しい一冊。